第13話「まっすぐ歩いているつもりだった。」
7月29日前後。
右足は、少しずつ動くようになっていた。
膝を伸ばす。
そして、そのまま数秒間、足をピンと張る。
それはできるようになった。
少し前まで動かなかったことを考えれば、確実に前には進んでいる。
でも、自分の感覚は違っていた。
なかなか進まない。
そんな気持ちのほうが強かった。
動く。でも、歩けない。
膝を伸ばすことはできる。
でも、「歩く」となると話はまったく別だった。
右足全体を、うまく持ち上げることができない。
足首が上がらない。
膝も曲げて持ち上げられない。
足の付け根にも、十分に力が入らない。
一つの問題ではない。
それぞれがつながって、右足全体を前に運ぶことができなかった。
それでも、歩かなければならない。
すると身体は、別の方法を使った。
身体が勝手に歩いていた
自分では、右足を持ち上げて、まっすぐ前に出しているつもりだった。
ところが実際は違った。
右足をまっすぐ前に出せないから、身体ごと使う。
右足を外側から、ぶん回すように前へ出す。
そのとき、身体も右側へ開いてしまう。
いわゆる、ぶん回しの歩き方になっていた。
でも、自分では気づいていなかった。
自分の頭の中では、ちゃんと足を持ち上げて、まっすぐ歩いている。
実際の身体は、そうではなかった。
それを初めて知ったのは、自分の歩いている姿を動画で見せてもらったときだった。
「こんな歩き方してるの?」
驚いた。
自分の感覚と、実際の身体
不思議だった。
自分は、ぶん回して歩こうなんて考えていない。
まっすぐ足を出そうとしている。
それなのに身体は、今の自分にできる動きの中から、自然とやりやすい方法を選んでいた。
足を持ち上げられない。
だったら、外側から回して前へ出す。
自分の意思とは違うところで、身体が勝手に工夫しているようにも見えた。
人間の身体って、不思議だ。
ただ、そのままでは、自分が思っている歩き方と実際の歩き方がどんどん離れてしまう。
まずは、自分がどう歩いているのかを知る必要があった。
Welwalkで自分を見る
リハビリでは、歩いている姿を動画に撮ってもらった。
後から、その動画を見る。
それだけではなく、Welwalkという機械も使った。
大きな画面に映る自分の歩き方を、リアルタイムで見ながら歩く。
自分ではまっすぐ足を出しているつもりなのに、実際には外側へ回っている。
身体が開いている。
それを自分の目で確認する。
そして、まっすぐ足を出す動きを意識する。
自分の感覚だけで歩くのではなく、実際にどう動いているのかを見ながら練習する。
この経験で、改めて思った。
頭の中で、正しい動きをイメージすること。
そのイメージを脳に伝えながら身体を動かそうとすること。
自分にとっては、それが大事なんだと思った。
まず、足全体を持ち上げる
歩き方だけを直そうとしても、そもそも右足が十分に持ち上がらない。
だから、まずそこからだった。
腰回り。
股関節。
足全体を持ち上げるために必要なところを鍛えていく。
この頃には、歩行訓練で使う装具も変わっていた。
中心になっていたのは、短い装具。
長い装具を使うこともあったが、補助的に使う程度になっていた。
自分としては、まだまだだった。
思っているようには歩けない。
右足も、思っているようには動かない。
「なかなか進まないな」
そんな不安が結構あった。
見えているものが違った
ところが、理学療法士さんの見方は違った。
自分では、
「まだこれしか動かない」
と思っている。
でも、理学療法士さんから見ると、
「結構動いている」
という評価だった。
だったら、もっと歩く練習をしていこう。
そのために、自分の足に合わせた短い装具を作って、集中的に訓練していこう。
そんな話が出てきた。
7月の下旬だった。
ただ、もうすぐお盆が来る。
業者さんとの話もあるので、すぐに作れるわけではない。
自分専用の装具については、お盆が明けてから本格的に進めることになった。
それは、もう少し先の話になる。
まっすぐ歩いているつもりだった。
自分では、まっすぐ歩いているつもりだった。
でも、動画の中の自分は違った。
右足を外側からぶん回し、身体を開いて歩いていた。
「こんな歩き方してるの?」
あのときの驚きは、今でも覚えている。
自分が思っている身体の動きと、実際の身体の動きは違う。
だったら、見る。
自分の動きを、自分の目で確認する。
そして、もう一度イメージする。
まっすぐ足を持ち上げる。
まっすぐ前へ出す。
まだ、できない。
でも、どう動きたいのかは分かる。
まずは、自分の歩き方を知ることからだった。
※このブログは、私自身の脳出血とリハビリの体験を記録したものです。症状や回復の経過、リハビリの内容には個人差があります。
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