第9話「前に進んでいるらしい。」
指が動いた。
自分の目で見て、作業療法士にも確認してもらった。
これは、分かりやすい変化だった。
でも、身体の変化は、いつも自分で分かるものばかりではない。
自分では何も変わっていないように思っていても、リハビリをしている人には分かることがある。
7月半ば。
今度は、右足にそんな変化が起きていた。
力が入っているらしい
7月14日から16日ごろ。
理学療法士とのリハビリ中だった。
右足を使う練習をしていると、理学療法士が腰のあたりに手を当てて、力が入っていることを確認してくれた。
力が入っている。
そう言われても、自分ではよく分からなかった。
指が動いたときのように、目で見て分かるわけではない。
右足が大きく動いたわけでもない。
自分としては、
そうなの?
という感じだった。
だから、このときのことは、指が動いたときほど強く印象に残っているわけではない。
でも、理学療法士には分かっていた。
身体の中では、少しずつ変化が起きていたらしい。
長い装具から、短い装具へ
そのころから、歩行訓練で使う装具も変わり始めた。
それまでは、長下肢装具という長い装具を使っていた。
それが、短下肢装具という短い装具へ。
少しずつ切り替えていくことになった。
自分では、ものすごく足が動くようになったという実感はない。
でも、使う装具は変わっていく。
リハビリも、次の段階へ進んでいく。
自分ではよく分からない。
でも、
前に進んでいるらしい。
そんな感じだった。
今度は、肩が痛い
足のリハビリが少しずつ前に進む一方で、別の問題も起きていた。
右肩が痛い。
麻痺している右腕は、自分では自由に動かせない。
その腕の重さもあって、右肩が亜脱臼の状態になっていた。
特に痛かったのが、朝起きたとき。
そして、運動をよくして身体に力が入ったとき。
肩が痛む。
足は少しずつ前に進んでいる。
指も動き始めた。
でも、身体の全部が同じように良くなっていくわけではない。
良くなっているところがあれば、別のところに問題が出てくる。
なかなか、単純にはいかない。
装具が減ったと思ったら、増えた
7月15日。
装具の業者さんに来てもらい、右肩に合う装具を確認した。
そして、約1週間後の7月22日。
出来上がった肩の装具を受け取った。
足は、長い装具から短い装具へ。
その一方で、肩には新しい装具が増えた。
減ったと思ったら、増えた。
でも、この肩の装具を着け始めてから、痛みはだいぶ引いた。
それはありがたかった。
ただし、毎朝やることが一つ増えた。
肩の装具を着けることだ。
初めての「毎日着替える」
このころ、まだ毎日服を着替えていたわけではなかった。
着替えるのは、お風呂に入る月曜日と木曜日だけ。
そんな生活だった。
だから、肩の装具を毎朝着けるというのは、自分にとって意外と大きな変化だった。
朝起きたら、装具を着ける。
次の日も着ける。
また次の日も着ける。
毎日、自分の身体に何かを身につける。
考えてみれば、これが入院してから初めての「毎日の着替え」のようなものだった。
右手が自由に動かない状態で装具を着けるのは、簡単ではない。
それでも、毎朝やる。
装具を着けることそのものが、一つのリハビリになった。
目に見えて身体が動くことだけが、回復ではないのかもしれない。
自分では気づかないところで力が入るようになること。
長い装具から短い装具へ変わること。
そして、昨日までしていなかったことを、毎日するようになること。
一つ一つは、小さなことだ。
それでも。
少しずつ。
前に進んでいるらしい。
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※このブログは、私自身の脳出血とリハビリの体験を記録したものです。症状や回復の経過には個人差があります。
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